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カジノと税収との関係とは

近年は日本でカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の解禁が議論されるようになり、ギャンブルの是非をめぐる意見の対立が起こっています。
日本でIRに関係する議論が始まった理由は外国人観光客の誘致による経済効果と、国や地方自治体が徴収する税金の収入が増えることです。
2030年に大阪湾に埋め立てによって作られた人工島である夢洲にカジノを含むリゾート施設がオープンすると、約6,300億円もの経済効果が得られるとみられています。
リゾート施設が得た利益のうち仮に1割が課税されるとすれば、年間あたり630億円もの税収アップとなる計算です。
ギャンブルはモノを精算せずにお金を右から左に動かすだけの“非生産的”なビジネスですが、莫大な富を生み出してくれる可能性を秘めていることがわかります。
カジノを解禁することで税収アップが見込めるとする意見がありますが、海外に目を向けると必ずしも十分な利益をもたらせてくれている訳ではないといえます。
たとえばアメリカ合衆国のネバダ州ラスベガスやニュージャージー州アトランティックシティの主な産業はギャンブルですが、近年は経営不振で衰退し続けています。
アメリカ合衆国では行政によりカジノ施設の数が管理されておらず、数が多すぎて過当競争に陥ってしまっている地域も見られます。
自由競争に任せると施設が乱立し、共倒れになってしまう恐れがあることが分かります。
アメリカ以外の国や地域に目を向けると、行政が施設の数を管理しており過当競争を防いで好調な業績を上げている所もあります。
地域限定でギャンブルを解禁すれば多くの観光客を誘致することができて税収アップが期待されますし、地域の雇用が創出されるというメリットがあります。
ただし、単純に国や地方自治体が得られる収入が増える訳ではありません。
多くの人が集まることで犯罪の発生件数が増加しますし、交通機関・道路・電気・水道などのようなインフラの整備が必要になります。
これに加えて、ギャンブル依存症の患者が増加することも懸念されています。
これらの要因は社会的な負担が増えることになり、これは国や地方自治体が支出する費用が増加することを意味します。
リゾートが好調な業績を上げていれば収入と支出を差し引いても黒字になるかもしれませんが、不況やその他の理由で観光客の数が減少すると施設の維持管理費や人件費が重い負担となってしまうことが予想されます。
税収アップのためにカジノ施設に対する課税割合を増やせば良いという考えもありますが、税金が高くなると客が負担する費用が増えることになります。
具体的な影響として考えられることには、ゲームのペイアウト率が低下したり、ホール入場料やホテル・レストランといった付随施設の利用料金が高くなってしまうでしょう。
既に世界には多くのカジノを含むリゾート施設が存在しているので、日本でIRが解禁された場合は海外のリゾート都市と競合しなければなりません。
日本でIRが解禁された場合はノウハウを持たずにゼロから出発しなければならないので、海外のライバルと競合することで苦戦を強いられる可能性が考えられます。
これに加えて最近はオンライン上で賭け事が楽しめるオンカジがあり、多くの日本人ユーザーも海外のサイトにアクセスしてゲームに参加しています。
オンカジのサーバーは税率の低い一部の国に設置されている上にほとんど人件費がかからないので、実店舗と比べてペイアウト率が非常に高く設定されています。
そのため、純粋に賭け事だけを楽しみたいユーザーはリゾート施設を利用せずに、オンライン上でゲームに参加する方法を選ぶでしょう。
日本の一部の地方自治体では高い経済効果や税収アップのためにIR誘致を積極的に進めていますが、大きなリスクも存在するといえます。